葬儀会館 北名古屋の正しい知識
二00二年四月の退任後、個別会見に応じた中で、彼はこう語っている。
「八月の解除が間違ったとは思わない。
ただ、米経済は十月か十一月くらいからおかしくなった。
まず、輸出がおかしくなった。
そういうことは現場を知らないN銀の人にはわからない。
僕ら(企業人)は、現場から見ており、九月の初めくらいから『十一月には間違いなく輸出が落ちそうだ』とわかっていた。
輸出が落ちるということは米経済が落ちるということだから」
ここで論点は一つに分かれる。
一つは、N、Uの両委員が反対したように、ゼロ金利は解除すべきでなかったのかという点。
もう一つは解除は正しかったが、そのタイミングを間違ったという点。
前者については、解除反対論者の一人の主張も前章で紹介したように、必ずしも一緒ではない。
Nは先行きの景気減速を懸念して、目標値を持ったマネタリーベース・ターゲティングに早期に移行すべきという先取りの立場。
Uは、GDPギャップの大きさから最適な政策金利レベルは、依然としてマイナスの可能性が高いとみて、「最適金利がはっきりとプラスになるまで待つ選択肢」を優先した。
米景気の減速がNの失速を招いた展開からいうと、Nの立場は先行的な備えを求めたわけで、失速への対応ともいえる。
もっとも、その場合でも、失速を食い止められたかどうかは不明だ。
Uの「待つ」立場の場合、その後の景気失速で最適金利はますます遠のいてしまったわけだから、当然、解両者の主張はともに、この間、水面下に潜っていた量的緩和策の検討にリンクしていく。
実際に、事態の展開はそうなる。
その展開を見る前に、もう一つの論点である「解除をもっと前に実施していれば良かったのか」という点も検証してみよう。
最適時期は九九年末?すでにみたように、N銀はかなり早くから解除を意識していた。
特にHはそうだった。
四月の時点で公に解除論に触れたわけだから、それ以前からタイミングを計っていたと考えていいだろう。
Sは一九九九年四月九日の政策委でゼロ金利継続の議長案に反対票を投じた。
この時の会合は、逆に時間軸効果によりゼロ金利策を補強した。
次の同月一十一日の会合でSは、「無担保コールレート翌日物を平均的に0・0三%前後で推移するよう促す」と提案、さらに五月十八日会合で、「0・一五%前後」と提案した。
つまり、Sは、解除論を実際の解除の一年以上も前に提案していた。
だが政策委の多数派は、代わりに市場の解除観測を先送りする時間軸効果を取り入れたのだった。
Sの提案のように、市場動向をみながら、政策金利を弾力的に変更させるスタンスを早めにとっていれば、解除か継続かの綱引きに陥らなかったかもしれない。
ただ、九九年四月の政治経済情勢から判断して、そうした決断をとれたかというと、疑問符が付く。
Mは前記のインタビューで、「本来は早めに解除をやっておけばよかった。
しかし、N銀の独立性とは言え、やはり必要に合わせて政府との整合性もとらなければならない。
しかもグローバル経済下で、ゼロ金利のままで失速を免れたかも不明。
むしろ、追加策の必要性が高まった可能性が強い。
ゼロ金利解除に賛成した審議委員たちも、米経済の動向を頭から楽観していたわけではない。
Sは解除時点までの心境を、後にこう振り返っている。
「米経済がバブルかもしれないという点について何度も議論したが、だからと言って、それがはじける五対四は僅差だが、解除案の採決は可能。
米FOMC(連邦公開市場委員会)や英イングランド銀行(BOE)などでは、時折、こうした僅差の政策決定が起きる。
しかし、N銀執行部は、極力多数派の合意を取り付けることで、万一の場合の政策転換リスクをカバーしたいと考えていたのかもしれない。
四月時点で五対四だったと仮定して、最終票差は七対二だったから、四カ月間先送りしたことで、票数は二票増えただけ。
二票の重みと、四カ月の喪失をどう評価するか。
もっとも、四月解除なら、議論が少なくて済んだとも思われないし、その後のゼロ金利復帰がやりやすかったとも断言できない。
政経不可分だから」と当時の微妙な心理を吐露している。
実際の景気循環はどうだったか。
内閣府は主要な経済指標の転換点である景気基準日付(景気の山、谷)を公表している。
それによると、九九年から二000年にかけては戦後から数えて第十三循環の拡張期間で、景気の谷はゼロ金利を開始する直前の九九年一月、山は解除の二カ月後の二○○○年十月。
そこから後退期間に入り、次の谷は一00二年一月となる。
拡張期間二十一カ月の中間で解除していたとしたら、九九年末がその時期に当たる。
まさに、解除論が台頭し始めたころだ。
この時点から四月ころまでだと、解除派はH、Y、Fの執行部委員三人のほか、S、さらにはTの五人だったとこの展望で合意した標準シナリオからどれだけ振れるか振れないか。
委員たちはこの点に政策運営の目安を置いた。
内外の微妙な変化の中、H、Y、FのN銀執行部のスタンスは、十一月に入っても、変わらなかった。
しかし、足元では微妙な修正が試みられていた。
同月半ばに公表された「金融経済月報」での表現の微調整だ。
七十月を通じて月報の物価判断は予測のほうは、一000年度のレンジを、実質GDP伸び率が一・九二・三%、国内卸売物価指数が0・00・一%、消費者物価指数がマイナス0・四〜0・二%。
実績はというと、同年度のGD・一%で予測を上回ったが、卸売物価と消費者物価はともにマイナス0・六%と予測に達しなかった。
年度前半の景気の好調さが成長率を高めたが、デフレからの脱却はほとんど進まなかったことになる。
までゼロ金利を続けるという選択肢は考えられなかった。
仮に米バブルがはじけ、日本も何かしなければならないという時、金利がゼロ%のままでは対応できないため、米経済が良い間に少しでも金利を上げておきたいという意識が強かった」十月三十日には、先に見たように課題だった政策委による「経済・物価安定」の展望を公表した。
米FOMCが成長率や物価の見通しを議会報告に盛り込むことがモデル。
インフレ目標とは根本的に違うが、金融政策の政策決定者たちが、政策運営の展望をどう見ているかという方向感を示すものだ。
最初の公表分の物価見通しは「全体としてゼロ近傍ないし、若干のマイナス」、Nの先行きの標準的シナリオとして、「物価安定のもとで緩やかな回復が続く可能性が高い」とした。
ただし書きで、「蓋然性は低いとしても下振れ、上振れ両方向のリスクも念頭においておく必要がある」との表現を付新方式なら支払い不能リスクを連鎖的に被る可能性が少なくなる。
しかし、取引ごとに決済するため、金融機関が必要とする決済資金は飛躍的に増える。
そのためにN銀は、金融機関向けに日中流動性の供与などの体制を整えねばならなかった。
年末にはRTGS用の資金需要と年末資金需要が合わさって実に五十兆円を越す大量の資金供給を実施した。
このこともあって、金融機関は資金量をいかに確保するかに腐心し、市場はその動向を見詰めていた。
「需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力は大きく後退している」と表現していた。
ところが、十一月の月報からは、その分がそっくり抜け落ちた。
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